ワインは酔わないの?なぜ?体質と飲み方で変わる酔いにくさの科学

「ワインを飲んでもあまり酔わない」という経験をお持ちの方、あるいは「ワインって酔いづらいお酒なの?」という疑問をお持ちの方、意外に多いのではないでしょうか。アルコール度数は12〜15%とそれなりに高いはずなのに、なぜかビールや日本酒ほど酔った感覚がない……そんな不思議な現象には、実はきちんとした科学的理由があるんです。

今回は、ワインで酔いにくいと感じる人がいる理由を体質・飲み方・ワインの種類という3つの角度から詳しく解説していきます。自分がワインに強いのか弱いのか、そしてより楽しくワインを味わうためのコツまで、わかりやすくお伝えしますので、ぜひ最後までお付き合いください。

目次

そもそもお酒に酔いにくい体質

身も蓋もない話から始まってしまい恐縮ですが、ワインで酔わないという場合、そもそもお酒に強い体質ということはまず考えられます。

アルコール分解酵素の個人差

お酒に酔いにくいという場合、その最大の要因は、生まれ持った体質による個人差にあります。アルコールは体内に入ると、肝臓で「アルコール→アセトアルデヒド→酢酸→水と二酸化炭素」の順で分解されるのですが、この過程で重要な役割を果たすのがALDH2(アセトアルデヒド脱水素酵素)という酵素です。

このALDH2の働きには、大きく分けて3つのパターンがあります。

酵素の活性レベル特徴酔いやすさ
活性が強いアルコールを素早く分解酔いにくい
活性が弱い分解に時間がかかるやや酔いやすい
活性がほぼない分解がほとんど進まない非常に酔いやすい

酵素の活性が強い人は、ワインを飲んでもアルコールが効率的に分解されるため、酔いにくく感じるというわけです。逆に活性が弱い人や全くない人は、少量のワインでも強く酔ってしまいます。

遺伝的な酒の強さの違い

興味深いことに、この酵素の活性は完全に遺伝によって決まっているため、努力や慣れで変えることはできません。両親からの遺伝子の組み合わせによって、生まれた時点で「お酒に強いか弱いか」が決定されているのです。

日本人の約40%がALDH2の活性が弱く、約4%が全く活性を持たないとされています。これは欧米人と比べて非常に高い割合で、日本人にお酒に弱い人が多い理由でもあります。

日本人に多い酔いにくいタイプ

一方で、残りの約56%の日本人はALDH2の活性が正常で、比較的お酒に強い体質を持っています。このタイプの人がワインを飲むと、「思ったより酔わない」と感じることが多いようです。

また、女性は男性に比べて体内の水分量が少なく、アルコール濃度が高くなりやすい傾向がありますが、それでもALDH2の活性が強ければ、ワインで酔いにくいと感じることは十分にあり得ます。

比較的酔いにくいワインの飲み方

温度が吸収速度に与える影響

体質だけでなく、飲み方によってもワインの酔いやすさは大きく変わります。特に重要なのが温度です。

白ワインは6〜9℃、赤ワインは14〜16℃が適温とされていますが、この温度差がアルコールの吸収速度に影響を与えています。アルコールは体温に近いほど吸収が早くなるため、冷たい白ワインの方が赤ワインよりも一般的には酔いにくいというわけです。

よく「白ワインの方がさっぱりして酔わない気がする」と言われるのは、実際に科学的な根拠があったということです。

食事と一緒に飲む効果

空腹時にワインを飲むと、アルコールが一気に小腸に届いて急激に吸収されるため、酔いが回りやすくなります。一方、食事と一緒にワインを飲むと、胃の中で食べ物とアルコールが混ざり合い、吸収速度がゆっくりになって酔いにくく感じるのです。

特に効果的なのは以下のような食べ物です:

  • オリーブオイルを使った料理(脂質がアルコール吸収を抑制)
  • チーズや肉類(高タンパク食品が肝機能をサポート)
  • ナッツ類(良質な脂質でアルコール吸収を緩やか化)

ヨーロッパでは、お酒を飲む前にオリーブオイルを口にする習慣があるほど、脂質の効果は広く知られています。「飲むときは何かを胃に入れた方がいい」とはよくいわれますが、上記の食べ物はどれもワインと合わせて食べることの多いものですから、「ワインで酔わない」と感じた場合、それが理由の一つになっていたかもしれません。

水分補給で酔いを抑制する方法

ワインと同量の水を交互に飲むことで、酔いを大幅に抑制できます。これには2つの効果があります。

まず、アルコール濃度の希釈効果です。体内のアルコール濃度が薄まることで、酔いにくくなります。

次に、脱水症状の予防効果です。アルコールには利尿作用があるため、体が脱水状態になりがちです。水分補給によってこれを防ぐことで、翌日の二日酔いも軽減できます。

これはワインに限らない話ですが、とても大事な「お酒の飲み方」ですね。

ワインの種類と酔いやすさ

白ワインが酔いにくい理由

前述の温度の違いに加えて、白ワインには赤ワインにある「生体アミン」という成分が少ないことも、酔いにくさの理由の一つです。

生体アミンには「ヒスタミン」や「チラミン」といった物質が含まれており、これらは血管の拡張や収縮に関与して頭痛やめまいなどの不快な症状を引き起こしやすいのです。白ワインはブドウの果汁のみを使用するため、皮や種に含まれるこれらの成分が少なく、結果として「悪酔い」しにくくなっています。

スパークリングの炭酸効果

スパークリングワインの炭酸は、実は酔いやすさを促進するという点で注意が必要です。炭酸ガスには血管を拡張させる作用があり、アルコールが脳に到達する時間が早くなって酔いが回りやすいのです。

ただし、炭酸によって満腹感が得られやすく、飲むペース自体はゆっくりになりがちという面もあります。この2つの効果が相殺し合うため、スパークリングワインで「思ったより酔わない」と感じる人もいるでしょう。

醸造方法による成分の違い

ワインは「醸造酒」に分類され、数十種類のアルコール成分が含まれているのが特徴です。これに対して焼酎やウイスキーなどの「蒸留酒」には、基本的に1種類のアルコールしか含まれていません。

一見すると複数のアルコールが含まれる方が酔いやすそうですが、実際には肝臓での分解が複雑になることで、じっくりと時間をかけて処理されるため、急激な酔いを感じにくいという側面もあります。

ただし、この複雑な分解過程のせいで酔いが長時間続きやすいという特徴もあるため、「酔わない」というより「酔いの感じ方が違う」と表現した方が正確かもしれません。


結局のところ、ワインで酔いにくいかどうかは、体質・飲み方・ワインの種類が複合的に影響した結果です。自分の体質を理解した上で、適切な飲み方を心がけることで、より楽しいワインライフを送ることができるはずです。

とはいえ、どんなに酔いにくい体質であっても、飲みすぎは体に良くありません。適量を守って、美味しいワインを楽しんでくださいね。

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